相続に必要な手続き

相続とは

そもそも相続とは誰かが亡くなった際に、その人が保有していた財産や権利、義務などを配偶者や子どもなどの関係者が受け継ぐことをいいます。亡くなった人は被相続人、財産を受け継ぐ人は相続人と呼ばれます。

相続は財産の所有者が亡くなった日に開始され、現金はもちろん、不動産や有価証券なども対象となります。またプラスの財産だけではなく、借金や損害賠償責任などのマイナスの財産も相続されることになります。場合によっては、相続を放棄することも考えなければなりません。



相続の手続きと期限について

相続には手続きが必要です。相続を行わなかったり、手続きが遅れてしまったりすると後で問題が発生してしまうこともあるので、十分ご注意ください。

死亡診断書の受け取りと死亡届の提出をする

まずは病院で死亡診断書を発行してもらいます。死亡診断書がなければ火葬や埋葬の手続きをすることはできません。死亡診断書は生命保険の停止などさまざまな場面で使うので、コピーしておくとよいでしょう。

次に死亡届を役所・役場に提出します。死亡届は病院で発行される死亡診断書(死体検案書)と一体になっており、死亡診断書は医師が、死亡届は届出人が記入します。

火葬の期限は法律で定められていませんが、葬儀の日に火葬するのが一般的です。火葬許可申請書は、死亡届と同時に提出するとよいでしょう。また被相続人が世帯主だった場合は、世帯主変更届けも一緒に提出しておくと後々の手間が省けます。(世帯主変更届は死亡から2週間以内に手続きすれば問題ありません。)

年金の受給を停止する

被相続人が年金を受給していた場合は、受給停止の手続きをしなければなりません。手続きは住民票のある社会保険事務所で行うことができます。手続きをする際は以下の書類が必要です。

  • 年金証書
  • 死亡診断書または火葬許可書
  • 戸籍謄本または除籍謄本
  • 被相続人と年金請求者の住民票写し

世帯主変更届を提出する

被相続人が世帯主であった場合は世帯主変更届を役所・役場に提出する必要があります。死亡届を提出するのと同じタイミングで提出するとよいでしょう。

金融機関へ連絡する

銀行などに登録者が死亡したことを伝え、死亡者の口座の取引を停止します。この際、公共料金などを被相続人が支払っていた場合は、引き落としできなくなります。そのため登録口座の変更やサービス停止の連絡も必要となります。

生命保険金を受け取る

生命保険の受取人になっていた場合は、生命保険会社に連絡して保険金を受け取ることができます。この際、ほかの相続人に許可をとる義務はありません。

国民健康保険資格喪失届を提出する

被相続人が国民健康保険に加入していた場合、役場に国民健康保険資格喪失届を提出する必要があります。また、被相続人が75歳以上の場合は、後期高齢者医療資格喪失届を提出します。国民健康保険や後期高齢者医療制度には、葬祭費や埋葬費を負担してくれる制度があるので、資格喪失届と一緒に葬祭費や埋葬費の請求をしておくといいでしょう。葬祭費は葬儀を行った日の翌日から2年後までは請求することが可能です。

遺言書の確認をする

相続人の誰がどのくらいの財産を受け取るかを考える前に、まずは被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認する必要があります。遺言書が見つかれば、その通りに財産を分けることができるからです。まずは被相続人の持ち物や金庫の中などを探してみましょう。また被相続人が公正証書遺言を残している可能性もあるので、遺言検索もしてみるといいでしょう。

遺言書の検認をする

遺言書を発見したからといって勝手に開封することは許されません。事前に被相続人の住所地を管轄している家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。検認とは、相続人全員に遺言の存在やその内容を知らせることで遺言書の偽造などを防止するための手続きです。
家庭裁判所に検認を請求すると、家庭裁判所が検認の期日を決定し、相続人に連絡します。そして、その期日に家庭裁判所が相続人の前で遺言書の開封と確認を行います。

相続財産を探す

次に被相続人の財産がどのくらいあるのかを把握します。財産は現金のほかに、有価証券や不動産なども含まれます。まずは、被相続者の持ち物を確認し、通帳などがないか調べましょう。不動産は、毎年5月ごろに役所や役場から送られてくる固定資産税の課税明細書で確認することができます。

財産はこのようなプラスのものだけではなく、借金などのマイナスのものも含まれます。後で知らなかったということにならないように事前にきちんと確認しておきましょう。

相続人を探す

遺言書がない場合は、相続人同士で誰がどのくらい亡くなった方の財産をもらうのかを決定します。これを遺産分割協議と呼びます。遺産分割協議をするためにはまず相続人が誰なのかを調査する必要があります。そのため亡くなった人の戸籍謄本や除籍謄本なども取得して確認しなければなりません。戸籍謄本や除籍謄本は役所・役場で取得できます。遠方の場合は郵送での取得も可能です。

遺産分割協議を実施する

被相続人の財産がどの程度あり、相続人が誰か確認したら、次は相続人で遺産分割協議を実施します。遺産分割協議はメール、手紙、電話などで行うことも可能です。万が一遺産分割協議で意見がまとまらなかった場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことができます。

相続財産の放棄や限定承認を検討する

前述したように、相続財産はプラスの財産だけだとは限りません。借金などマイナスの財産がの方が多い場合は、相続を放棄することも可能です。ただし相続を放棄するとプラスの財産も相続することができなくなるのでご注意ください。

限定承認という方法もあります。限定承認とは、相続した財産で借金を返し、お金が残ったら受け取ることができる制度です。相続放棄と限定承認をする場合は、相続があったことを知った日から3ヵ月以内に手続きする必要があります。

所得税の準確定申告を行う

被相続人が事業を行っていたり、年間2,000万円以上の給与所得があったりした場合は、相続人が代わりに確定申告をする必要があります。これを所得税の準確定申告といいます。準確定申告は、相続人の死亡後4ヵ月までにすませなければなりません。この期限を過ぎてしまうと延滞税などがかかるおそれがあるので注意が必要です。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が終了したら、遺産分割協議書に誰がどの財産を相続するのかを明記します。遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が必要です。相続人全員分を用意し、それぞれが保管するようにしましょう。

相続税を納付する

相続税が基礎控除を超える場合は、相続税を納付する必要があります。遺産分割協議が終了後、相続税の計算をして税務署に申告します。相続税の納付の期限は、相続することがわかってから10ヶ月以内です。10ヶ月を過ぎてしまうと延滞税が発生する可能性があるのでご注意ください。

留分減殺請求の手続きをする

遺言書の文言にかかわらず、親や子ども、配偶者などは最低限の遺産は受け取ることができます。そのため、もし遺言書などの記載の通りに財産を受け取ってしまった場合も、権利を主張することができます。これを遺留分減殺請求といい、ほかの誰かが受け取ってしまったことを知ってから1年以内に実施する必要があります。

葬祭費、埋葬料を申請する

被相続人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合、喪主は2~7万円の葬祭費や5万円の埋葬料を受け取ることができます。葬祭費の請求期限は、葬儀を行った日の翌日から2年、埋葬日は被相続人が亡くなった日から2年です。忘れずに請求しましょう。

税務調査への対応をする

税務調査は相続税申告後、翌年~翌々年の夏から秋にかけて行われる可能性があります。税務署の調査が入った際に、相続税の申告が正しいことを証明できるようにあらかじめ準備しておきましょう。

相続税軽減の手続きを行う

相続税にはさまざまな軽減制度があります。被相続人が亡くなってから3年10ヵ月以内に遺産分割協議をまとめ、その後4ヵ月以内に税務署に更正の請求を行うと、配偶者控除などを受けられる可能性があります。確認してみましょう。

相続税の還付請求を行う

相続税を払い過ぎていた場合、税務署に返金してもらうことが可能です。払い過ぎた相続税を税務署に返金してもらうことを相続税還付といいます。相続税還付は被相続人が亡くなってから5年10ヵ月以内に行うことが必要です。

相続手続きを
自分で行うのは大変

亡くなった人の財産を
相続する前も相続した後も
やらなければならないことはたくさんあります。
期限に遅れてしまうことで
損をする可能性も考えられます。
もし相続手続きを自分で行うことに
不安を感じている方がいらっしゃったら
内田行政書士事務所にご相談ください。
丁寧にサポートさせていただきます。