一般社団法人とは
一般社団法人は、営利を目的としない法人で、平成20年12月から制度が始まりました。この「営利を目的としない」というのは、利益を生じてはいけない、ということではなく、利益を出資者に分配しないという意味となります。
そのため、一般社団法人の事業に制限はなく、収益を上げる事業も可能ですし、役員や従業員は、報酬や給与を受け取ることができます。
また、一般社団法人には、持分がありません。
株式会社の場合は、株主は出資により株式という持分を取得します。
しかし、一般社団法人では持分や出資という概念がありません。この為、個人の財産が一般社団法人に移転しても、その財産が持分に変化することはありません。
したがって、一般社団法人に財産が移転した時点で、その財産は個人から完全に切り離され、法人の財産になります。
一般社団法人に移転した財産は、既に個人の財産では無くなる為、相続税も課税されません。
一般社団法人を利用した
事業承継とは
一般社団法人を事業承継に活用するには、一般社団法人が事業承継の対象となる会社の株式を保有します。そのうえで、一般社団法人の代表者の地位を後継者に引き継ぐという方法をとります。
この方法により、後継者は一般社団法人を通じて、対象会社を含むグループ会社全体を支配できるようになります。
また、一般社団法人が株式を保有すれば、株式の相続が発生しなくなります。したがって、以後は代表理事の地位を引き継ぐことで事業承継が可能になります。
一般社団法人を事業承継に活用する方法は、相続や贈与とは異なります。この為一定の要件を満たす必要はありますが、相続税や贈与税が課税されないというメリットがあります。
一般社団法人による
株式保有スキーム
一般社団法人を事業承継に活用するには、一般社団法人が事業承継の対象となる会社の株式を保有します。そのうえで、一般社団法人の代表者の地位を後継者に引き継ぐという方法をとります。
直接保有型
一般社団法人が持株法人になる方式①
直接保有型は、一般社団法人が対象会社の株式を100%取得し、持株法人になる形式です。
*一般社団法人(株式100%)→
承継対象会社
一般社団法人が対象会社の株式をすべて保有しているので、一般社団法人の代表者は、一般社団法人を通じて対象会社を完全に支配することができます。
間接保有型
一般社団法人が
持株会社の株主になる方式②
間接保有型は、一般社団法人が対象会社の持株会社の株式を100%保有する形式です。
*一般社団法人(持株会社株式100%)→
持株会社(株式100%)→
承継対象会社
間接保有型では、一般社団法人と対象会社の間に持株会社が入ります。一般社団法人の代表者は、持株会社を通じて間接的に対象会社を支配する形となります。
財産の移転について注意すべき点
一般社団法人を利用するスキームでは、財産の移転に注意が必要です。
仮に、一般社団法人に対して財産を贈与しようとした場合
- 贈与した個人…時価で売却したとみなされて〝譲渡所得税″が生じる
- 一般社団法人…法人税の受贈益として〝課税″が行われる
また、個人の財産を一般社団法人に移転により、贈与税や相続税の負担が不当に減少したと認められた場合、一般社団法人が個人とみなされて、贈与税や相続税を課税されてしまいます。
そのため、個人から一般社団法人に財産を移転する場合には、適正価格の売却が重要になります。
一般社団法人による事業承継の
メリット
一般社団法人を事業承継に活用するメリットは、以下の4点です。
① 相続が発生しない
一般社団法人には持分という考え方がありません。したがって一度法人に帰属した財産は、個人の持分としてではなく、一般社団法人の財産として捉えられます。
そのため、一般社団法人に移転した財産については相続が発生しません。
② 事業承継のコストを低減できる
一般社団法人の社員と代表者(代表理事)を後継者に変更すれば、後継者は一般社団法人を通じて承継対象会社を支配することが可能です。社員と代表者の変更には特段の資金を必要としないため、事業承継のコストを低減することができます。
③ 課税されない
一般社団法人が承継対象会社等から受け取る配当金は益金に算入されないので課税されません(一定の要件を満たす必要はあります)。
④ 倒産隔離機能
一般社団法人には倒産隔離機能があります。つまり、個人が破産しても一般社団法人は影響を受けずに済みます。
個人が株主の場合、破産すると破産財団の中に株式が含まれてしまいます。
しかし、一般社団法人に株式が移転していれば、その株式は個人の財産とは完全に区別された一般社団法人の財産とり、破産の影響を受けません。
一般社団法人による事業承継の
デメリット
一般社団法人にはデメリットは、以下の4点です。
① 頻繁な役員変更登記が必要
理事の任期が最長でも2年と短いため、その度に役員変更登記が必要です。株式会社の場合であれば、役員の任期を最長10年に設定することが可能です。
② 法人住民税等の税金がかかる
法人である為、毎年、法人住民税等の税金がかかります。また、一般社団法人も株式会社等と同様に確定申告の必要があるため、顧問税理士等の費用も必要です。
③ 利益配当が無い
一般社団法人から利益の配当を受けることはできません。
④ 今後制度改正の可能性がある
一般社団法人は比較的新しい制度であるため、制度の改正が行われる可能性があります。今後の税制改正により、課税が厳しくなるリスクもあります。
一般社団法人の実体が重要
平成30年に法律が改正になり、一般社団法人が相続税を回避する目的のために設立された場合には相続税が課税されるようになりました。
従いまして、課税されないようにするためには、一般社団法人が事業を行う実体を備えるていることが重要になります。