株式の集約化

名義株式とは

名義株式とは、会社に実際に出資をした人と、会社の株主名簿に記載されている株主が異なる株式のことです。
会社設立時や株式発行時などに、何らかの事情によって他人の名義を借用して株式の引き受け・払い込みをすることがあります。この場合、株主名簿には、実際に出資を行った名義借用者ではなく、形式的に名義を貸しただけの名義貸与者の名前が記載されます。このような状態になった株式が名義株式と呼ばれます。



名義株式が発生する理由

このような名義株式が発生する場合、主に、以下の2つの理由が考えられます。

平成2年以前に会社を設立し、
発起人となった場合

平成2年以前の商法では、会社を設立する際に、7人以上の発起人が必要であり、発起人は、会社設立時に1株以上の株式を引き受ける必要がありました。したがって、法定の発起人の人数を揃えるために、家族、親戚、従業員、知人などの名前を借りて、形式上の株主になってもらうケースが多くありました。

相続税対策

同族会社では、企業オーナーに自社株式が集中することが多く、自社株式の相続税評価が高額になる企業では、将来の自社株式の承継時に、相続税として高額な負担が生じる可能性があります。
そこで、企業オーナーに集中していた自社株式を家族、親族、役員、従業員などに分散させて、相続発生時の税負担を軽減する目的で形式的に名義変更を行うことがあります。このような場合、株主名簿には、形式的に企業オーナーから自社株式を譲り受けた人が株主として記載されますが、実際に議決権を行使するのは企業オーナーであるため、名義株式となります。



名義株式のデメリット

名義株式をそのまま放置すると、以下のようなデメリットがあります。

相続税が発生する可能性

相続税を回避する目的で、株式の名義を出資した本人ではなく、その子どもなどの相続人名義にしたとしても、相続税の課税は、その財産の名義人が誰であるかではなく、その財産を「実質的に所有しているのが誰であるのか」によって課税が行われます。そのため、名義預金と同様、名義株式についても名義人ではなく、実際の出資者が財産の所有者として扱われる可能性があります。
そこで、名義株式が相続人ではなく、被相続人の財産であると判断されるような場合には、被相続人が亡くなった際に相続税の申告をしなければなりません。しかし、相続人が、名義株式は被相続人の遺産に含まれると認識していないと、名義株式を含めて相続税の申告をすることができず、後日追徴課税されるリスクがあります。

事業承継税制の適用が否認される可能性

事業承継税制とは、後継者が相続や生前贈与によって株式を引き継いだ場合に、本来支払うべき相続税や贈与税の支払いを猶予する制度のことで、円滑な事業承継を行うことを目的としています。
事業承継税制の適用を受けるためには、さまざまな要件がありますが、先代経営者が一定以上の株式を保有していることも要件となります。この場合の株式保有要件は、実質面で判断することになり、形式面は適用されません。事業承継税制の適用を受けるために、形式上名義を変更したとしても、先代経営者名義の株式として認められないおそれがあります。

会社の運営が不安定になるリスク

名義株の持主に相続が発生した場合、その相続人は譲り受けた株が名義株として取得したものであると言う認識がないため、株主としての権利を主張することも予想されます。
また、名義株の相続人が高齢の場合、名義株を相続したまま放置しておくと、更に次の相続が発生し、相続人の数が数十人となってしまうこともありえます。この場合、その相続人の調整には多大な労力が必要となるでしょう。



名義株式の解消方法

名義株式の状態を解消するには、ケースによって以下の手続きを行います。

名義人と連絡が取れているケース

名義株式の名義人と連絡が取れている場合は、まず名義人に事情を説明し、名義株式の名義変更を求めます。その際には名義株式であることを証明する必要があります。名義株式であることを証明するには、以下の資料を準備が必要です。

  • 名義貸与承諾書
  • 出資金の振り込み履歴
  • 配当金の支払い通知書
  • 株主総会招集通知
  • 株主総会議事録

名義人が名義変更に承諾をしてくれない場合には、以下のような方法で名義変更を行います。

株式の買い取り

名義人に対して金銭などの対価を支払うことによって、株式の名義変更を行います。ただし、対価が実際の株式の価値に比べて著しく低い場合には、贈与税が課税される可能性もあります。

強制排除

強制排除(スクイーズアウト)は、名義人が保有する株式を1株未満にすることによって、強制的に会社が株式を取得する方法です。

全部取得条項付き種類株式

発行済み株式すべてを全部取得条項付き種類株式に変更し、少数株主の株式を会社や大株主が買い上げます。これにより、強制的に名義株式を回収します。

株式併合

複数の株式を1つにまとめて少数株主の保有する株式を1株未満の端株にします。これにより株式としての効力を失わせ、端株を会社が買い取ることにより、強制的に名義株式を回収します。



名義人と連絡が取れないケース

名義人と連絡が取れないというケースでも、以下のような要件を満たせば、所在不明株主の株式売却制度を利用して、名義株式の状態を解消できます。

  • 所在不明株主に対する通知または催告が5年以上継続して到達しないこと
  • 所在不明株主が剰余金の配当を5年間継続して受領していないこと

所在不明株主の株式売却制度を利用すれば、名義人の承諾がなくても、取締役会決議および裁判所の許可を得ることによって売却が可能となります。

まずはご相談を

自社の株式に名義株がある場合に、
そのままにしておくと大変なリスクがあることを
ご理解いただけましたでしょうか。
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